なのかしら |
たまには国文科出身らしいところを見せてもいいですか。 女性と、一部の男性がよく使うと思われる言葉「なのかしら」について少々。 「なのかしら」の「ら」は、もともと現在推量「らむ」の名残り。 時々「なのかしらん」という人がいるのも「らむ」から来たものだからであろう。 意味もそのまま受け継いでいる。 言葉は時代を越えて生きているんだな、なんて ちょっと大袈裟に壮大な気持ちになってみたりする。 が・・・。 過去推量!過去推量の「けむ」はどうなったのだ。 今に至るまでに抹消されてしまったのだな。「けむ」よ。 ああ「けむ」がまだ生きていたら、今の言葉はどうなっていたのか・・ 私が今ここに蘇らせてみようではないか。 Aさんは、Bさんがさしみこんにゃくを今日食べるのか、昨日食べたのか気になっている。 Aさんは事の真相をCさんに尋ねる。 「ねえBさんって、さしこん今日食べるのかしら。昨日食べたのかしら。」 今日は「現在」ゆえ「かしら」でいい。 しかし昨日は「過去」なのに、同様に「かしら」を使っている。 ここで過去推量「けむ」の出番である。 「ねえBさんって、さしこん今日食べるのかしら。昨日食べるかしけ。」 こうなる。 「昨日食べるかしけ。」 「け」がすでに過去の意味をもつので「食べる」をわざわざ「食べた」と 過去形にしなくてよいのである。 慣れればむずかしいことはない。 歴史が「けむ」を消してしまったから違和感があるだけだ。 歴史を刻んだ人が違えば、今頃 「昔、行くかしけ?」「昨日遊ぶかしけ?」 という言葉が街中を飛び交っているはずだ。 みなさんも、今までに「もしも」を考えたことがありますかしけ。 |